以前勤めていた特別養護老人ホームでフィリピン人の技能実習生5人と仕事をしました。彼らは総じて真面目に仕事をしていました。介護技術はもちろん、日本語を学ぶ姿勢も積極的でした。
しかし時に気になることがあります。時間にルーズな点です。
日本は時間厳守な国です。遅刻は厳禁という風潮があります。一方のフィリピンは聞けば定時出社は目安で、時間が過ぎての出社は珍しくない、とのこと。もちろん、技能実習生は遅刻は殆どないものの、職務上で時に時間がかかる場面でルーズな頃合いが発生します。”少しは焦ろうよ”と言いたくなるような場面が散見するのです。
例えば入浴介助で何らかの理由で時間がかかってしまった。次のスケジュールである食事介助が差し迫っている。では、後片付けなどはまずは置いといて時間ができたタイミングで処理すればいい、先に食事介助・・・そう考えるのが日本人の傾向です。しかしフィリピン人は丁寧に後片付けを完了してから食事介助の席に着きます。よく言えば大らかですが、食事介助にあたっている他スタッフの負担が一時的に偏ってしまいます。この辺りの理解が及ばないケースがありました。
介護の現場は利用者の生活を第一に、スタッフが絡むことで成り立ちます。タイムスケジュールは重要です。
そこで改めてフィリピンの介護について調べてみました。
フィリピンは家族で介護をします。日本でも同じく、なのですが、家族単位の規模が異なります。日本は核家族が多いのに対し、フィリピンは拡大家族が多いのです。自分が手一杯なら誰かがしてくれる。それだけの人員が家族におり、このような助け合い精神が成立し、自然と根付いているのです。日本にも「互助」という概念はありますが、意識化してはじめて成されるような場面が多く見られます。
介護の仕事の現場に戻りましょう。
スケジュールがありますが、シフトによって仕事を固定化する事業所は多いです。例えば、早出が洗面台掃除をする、遅出がリネン交換をする・・・などです。一見すると合理的ですが臨機応変に対応できないというデメリットがあります。
イレギュラーな仕事は介護の現場では当たり前です。先述の例で言うとタイミングの問題で遅出者にトイレ誘導や体調不良者の対応の仕事が行き過ぎてリネン交換がなかなかできず、しかし他勤務者は自身の仕事を淡々とする。結果、遅出者が一人焦っている・・・という例があります。要はカッチリと決まりすぎて互助の臨機応変さが発揮できないのです。
フィリピンだと阿吽の呼吸でフォローが入るのでしょう。そこは尊重すべき国民性であるといえます。誰かがフォローに入る前提ではなく、スケジュールに則り自身で考え対応することも重要です。限られた人員、自分でなんとかしてみようという、「自助」の精神もゆっくりと説明することが必要だと言えるでしょう。日本の地域包括ケアシステムの理解につながるはずです。
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